事業成果と個の動機付けを阻むマネジメント境界とは

● マネジメント・キャズム~マネジメント境界に潜在する溝

 

事業経営のマネジメントには、二つの境界があります。

ひとつは理論と実践の境界、もうひとつはマネジメント対象の取組み各層の境界です。このサイトでは、これらの境界をマネジメント・キャズムと括り、境界を繋ぐ知恵をご紹介します。ポータルとしてご利用いただけるよう、マネジメント理論や事例、参考図書なども多く引用します。

 

● マネジメントの目的とは

 

マネジメントの目的とは何でしょう?

まず、経営の目的から確認しましょう。

これはドラッカーさんが単純かつ力強く言い尽くしてます。顧客の創造(Create a Customer)が唯一の目的である、と。原文を読むと、彼の確信が読み取れます。

(*自営業含め、経営者ご自身が優秀なセールスマンやマーケターであるように感じることがよくあります。顧客の創造能力が経営体の根幹で、それが自分に出来るかと問うとよく判ります)

マネジメントとはその目的に向かう戦略と、実際に経営資源を動かすスキームです。つまり、マネジメントを行うこととは戦略をうまく実行することによる顧客の創造と言えますね。

 

顧客の創造には、売買される商品・サービス等の実益(ベネフィット)の提供も含め信用(ブランド)が必要です。ブランド構築には、商品・サービスも含め、顧客との全てのインタラクションに品位が必要で、長期に渡ってそれを守る必要があります。そのために、企業は、品質基準から社員のモラルまで、広範な規律を設定しているわけです。

 

顧客を創造する、そのために継続可能な、かつ、独自の品質をもって、顧客価値を提供し続けること、これがマネジメントを行う理由と考えます。

 

● 個人とマネジメントシステムとの関わり

 

私たちは、消費者であり、また、企業の一員として商品やサービスの提供者でもあります。つまり事業マネジメントによる成果の創出と、その消費の中心です。個人は、この構造の中に経済的・社会的なポジションを獲得していくことに多くのエネルギーを使いますし、事業組織はこのエネルギーを経営資源として、その使い道を決め、成果創出を目論みます。このマネジメント成果をベネフィット(実益)と称します。ベネフィット創出の仕組みが、マネジメントシステムであると考えます。

 

マネジメントとは、ベネフィットを媒介にした、経営体、スポンサー、顧客、社員、関わる全ての個々人の幸せを最大化する・不幸を最小化する、ためにあると言えるでしょう。

 

● そして、キャズムを埋める

 

しかしながら、このシステムが、うまく回らない部分が潜在的・構造的にあることを、私たち企業人は経験しています。社内や社外に軋轢が生じ、意図した実行を阻害する要因の大半が、システム境界、ここにある。このキャズムを不幸の発生源として、最小化する知恵を共有することは、私たちの幸福や日々の快適さに繋がるはず、が、このサイトのコンセプトです。

特に、組織職にある方は、オペレーションを洗練させる責任があります。組織内の成功体験だけでなく、セオリーや成功事例を学び、摺り合わせ、改革する役割を実践すると組織は成功に向かって効率化し、快適なビジネス環境を実現できるはずです。(*筆者は’快適な’にこだわります。なぜならば、組織人は多くの時間を職場で過ごしますが、仕事を進める快適性に疑問を感じることを経験しています。オフィスの快適性や、待遇だけでなく、仕事を進める快適さにもっとフォーカスすべきです。この快適さはマネジメントシステムの出来・不出来に左右されると考えています。)

 

● マネジメントシステム概観~PPP

 

さてヘッダーの写真、石積みは経営フレームワークを連想させたので選びました。挿絵をご覧ください。ミッション・ビジョンから、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト(PPP~Portfolio/Program/Project)、そして定常業務(製造、販売、サービス、業務等)の階層化された三角形が、経営体の構造です。これは、米国PMI(Project Management Institute) の定義を参照しています(*詳細は、リンク集にあるPMIのサイトを参照ください)。どの企業でも、概ねこの構造、流れで経営が動いています。また、大企業の場合、事業部単位で切り取ってもこの三角形が当てはまります。フラクタル、が連想されますね。

 

● マネジメントシステムとマーケティングプロセスを重ねれば

 

この三角形にマーケティングプロセスを重ねると、事業経営の全体構造と全体サイクルが表現できます。

企業人の全員が、このどこかに身をおき(責任・権限)、今、このどこかの作業(プロセス)を実施していることが判ります。この全体像を把握して、自分の現在位置を自覚しておくことが、組織人に必須の連係プレーの効率・効果を高め、またキャリア構築への俯瞰図になるはずです。

 

● マネジメントの対象

 

さきほどの三角形をもっと抽象化してみましょう。三つの対象が浮かび上がります。

1.戦略~目的への戦略

2.構造~戦略施策の構造

3.価値~施策構造が産み出す価値

これら三つがマネジメントすべき対象であり、この三つの間に生じるギャップを補整していく取組こそがマネジメントです。

実行チームは、リーダー、つまり経営チームとの論点に、この三つを据えることが成功への条件です。

■ 組織設計のマネジメント J.R.ガルブレイス 生産性出版

 

 

 

PPPは組織横断が前提のマネジメントですが、本図書は、組織横断をどのように実現するかを、複数のマネジメントモデルを引用して説明しています。非公式グループ型からマトリックス型までの分析とマネジメントコスト対効果の考察は、実施に向けて考慮に入れるべき知見です。